日独の自動車産業の攻防
トヨタ自動車を初めとする日本の自動車会社は決算で史上最高益を上げていて、好調
のように見えますが、しかし、今年はドイツのフォルクスワーゲン・グループが自動
車の販売台数でトヨタを抜いて世界一位になると予想されていて、日独の自動車会社
の攻防は日本のメーカーの弱体化を示しているとも言えなくもないのです。それとい
うのも、自動車産業はたくさんの部品メーカーの存在がなくしては成り立たない技術
集約型の産業で、この部品メーカーの収益が日独で明確な差があるのです。
まず、日本メーカーにおける部品メーカーは、自動車会社が最高益を上げているにも
かかわらず、その収益はお寒い限りなのです。つまり、全く儲かっていないのです。
リーマン・ショック時のときのまま、部品メーカーに対する自動車メーカーの注文は
相変わらず価格を抑えて、それにも拘らず高品質の製品を要求していて、自動車メー
カーの儲けは、全く部品メーカーに反映されていません。
それに対して、独メーカーは日本とは違い、部品メーカーも自動車会社の利益が増え
るに従って収益も上がっていて、この点、一度立ち止まって考えなければならない点
に思います。
日本の自動車会社が最高益を上げたのは単純に言えば円安によるものです。円安で、
収益率が上がっただけに過ぎないとも言えるのです。そして、それに付随する自動車
部品メーカーは日本の自動車会社と一蓮托生の関係はほとんど変わってはいません。
独の部品メーカーが独の自動車メーカーばかりを相手に取引を行ってはおらず、既に
独の部品メーカーは独自の販売網を築き上げていて、独の自動車会社の収益が仮に落
ちてもその他の国々での販売で利益が確保できるまでに自立しています。
この点、日本の部品メーカーは独り立ちしているとはお世辞にも言えず、日本の部品
メーカーも日本の自動車会社から独り立ちをするべき時が来ています。それをしなけ
れば、日本の産業は弱体化の道を歩み、家電メーカーのようにスマートフォン市場で
は世界の潮流から乗り遅れてしまった同じ轍を踏みかねないのです。